Moonlight scenery

     “The dress code in midsummer?
 


地中海に面した小さな半島と、それを取り巻く群島からなる、
それはそれは小さな王国がありまして。
地中海を挟んでの北と南、
欧州諸国とも砂漠の地域とも接している格好の、
機構的にも歴史的にも、
勿論のこと、
政治的にもなかなかに微妙な位置にある独立国家。


……とかいった、
いつものお固い紹介はこの辺でご容赦を。
だって、季節は夏ですものvv
色々と開放的、且つ情熱的な夏。
油を滲ませたような、厚みと力
(リキ)のある空の青と。
地に満ちるはそれへの拮抗を競う深い緑か、
それが追いつかずに、陽にさらされて白く乾いた、石壁や砂浜か。
はたまた、
昂然と構えて見下ろす空とは 地平の彼方で接する、
それは雄大で力強い、母なる海の紺碧か。

 「そうよ、夏よ夏。
  レジャーにバカンスって繰り出すお客を捌くので、
  ウチの国も書き入れ時を迎えて これからが忙しいんだから。」

そういうのが担当の観光省関係とは微妙に管轄が違うのだろうに、
妙に張り切った物言いをしたのは。
王宮の、しかもバリバリに内宮務めという立場にある、
第二王子づき書記官、古風な言いようで“佑筆”のナミであり。
大窓を開け放ち、爽やかな朝の風を招きいれた総合執務室にて、
白い拳を胸元でぐうに握って、力説を始めた彼女なのへと、

 「…もう結構以前から夏だぞ、ここいらは。」
 「あまりに暑いんで、とうとう弾けたかな?」

大工、もとえ、保全技術局の工部担当の、
ウソップとフランキーが、
こちらも夏の装いか、
片やは半袖アロハにブーメランパンツ オンリー、
片やは素肌へいきなりオーバーオールという“作業服姿”にて
おいおい…と気を合わせて呆れているものの、

 「……あんたらには言われたかないわよ、それ。」

佑筆さんのお声が震えたのも……ごもっとも。
(苦笑)

 「この辺りは地中海気候の典型で、
  確かに気温は上がるけど、湿気はさほどないのよ?」

そりゃあまあ 海が近いから?
潮混じりの風が吹いてて、
気持ち 湿っぽいような感触がするかもしれないけれどと、
先んじるよに言い足してから、

 「だってのにまあまあ、
  観光客が…それも貴賓クラスの海外からのお客人たちが、
  通されるかもしれない内宮で、
  何てカッコしてるか、あんたらはっ!」

そうですよね、
海外からおいでの、王室関係者とか大臣級の政治家相手に、
歓迎歓待行事の一部として、王宮へご招待ってのはよくある話。
立ち入り出来る顔触れが限られていて警備をしやすいのと、
慌てて一から取り繕わずとも、
格式あるあれこれの準備は整っておいでだから…な筈が。
下手すりゃ風紀関係の取り締まりの対象になりかねない恰好で、
威容あふれて気品に満ちた場であるはずな王宮内を、
悠々と闊歩している顔触れがいるなんて…と、
ナミさんのお腹立ちも もっともなお話。

 「どっかの下町の作業工房のおやっさんだって、
  もちっと節度のある恰好してないか?」

レディもいる職場なんだしよと、
こっちも慣れというものか、長袖のシャツをぱりっと着こなし、
ボトムも 生地こそ麻らしいが足首まであるパンツといういつものスタイルのまま。
同僚二人へ呆れたサンジが…それでも苦笑をしつつの言いようとなったのは、
今更な話だがと思えるほど慣れたせいもある。
当初は レディに何見せてやがるかっと、
かかと落としつきで怒鳴っていたものだったが、

 “こうまで暑い日々ではね。”

そこまで大層なもんでなしという、ちょっとした修理や何やには、
ガレージや防音のための密閉空間になってる作業場を避け、
陽盛りの芝草の上なぞで、作業をこなしておいでの彼らなので。
肌脱ぎになるのも致し方ないかと、多少は理解を寄せてもいるから。
それでなくとも、暑さで不具合が起きたあれこれへの修理が増えており、
他の課員への緊急処置のレクチャーなどなどもあってのこと、
結構 忙しい彼らであるらしく。

 「王宮内見学とかある日は、通達出すから。
  せめてそういう日だけは まともなカッコしてくれな。」

 「あいよ、判ったぜ。」
 「ほーい。」

まだ微妙に憤然としているナミの手前、そんなカッコで場を収めつつ、

 「俺としちゃ、
  ナミすゎんのチューブトップ姿とか拝みたいトコですのに
  我慢してんですしぃvv」

 「軽くセクハラ入ってない? それ。」

軽く笑顔を作っちゃあいたが、その実 憤然と背を向けた女神様を追って、
あわわ、怒らないで…と クーリッシュ隋臣長が退場したところで。
あんまり進歩はないままに、
それでも無事に早朝ミーティングが終わった、
至って平和な、翡翠宮だったりするのであります。



  ………………そして



そんな総合執務室の大窓の向こう、
瑞々しい青葉がたわわに茂り、吹きつける潮風に揺れていた、
オリーブやオレンジの木々が配置よく植えられた庭園の奥向きにては。
ナミさんが喩えに出してた“貴賓の接待の場”に、
このところ必ず引き出される頼もしきホスト役、
第二王子のルフィ殿下。
今日はそういう予定がないものか、
青々とした下生えの、芝草のクッションもいい木陰にて、
心地よさげに“すいよすいよ”とお昼寝中。
勿論のこと、王族のトップにも等しい主家の殿下なだけに、
庭園周縁の警備はもとより、
すぐの間近にも専属の警護官が付きっきりなのであり。

  さわ…っ、と

頭上の梢にて、
これはスズカケか、比較的柔らかそうな葉が、
静かで清かな 木葉擦れの音を立てたのを見上げ。
次には、その木の葉の影がちらちらと躍る、
王子殿下の柔らかそうな頬を、眼下へ見下ろした護衛官殿。

 “暑っ苦しくないのかねぇ…。”

女性のそれのように柔らかいはずもない、
鍛え抜かれた筋肉質の“野郎”の腿を枕にし、
よくも くうくうと寝入れるよなと。
枕にされてるご本人が、
しかも知らず微笑みつつ思っていては世話はない。
かつては砂漠の戦場で傭兵として活躍した彼の、
男臭くて精悍なお顔が、ここまで柔らかくなるんだと、
彼をよく知る人ほど吃驚し。
だがだが、
今の彼をこそ よくよく知る人ならば、
しょうがない奴だとの苦笑が浮かぶだろう、
何とも言えぬ、微妙な甘い顔。
風に遊ばれ、頬へと落ちる
まとまりの悪い前髪の端を、
武骨な指先でそおっとどけてやりながら。
そちらさんは短く刈った緑の髪へと落ちる、
木の葉の影に紛らわせ、
何とも言えぬ甘やかな眼差しをなさる護衛官殿であり。


  こちらのお国でも始まったばかりな夏は、
  今のところは安泰に運んでいるようですよ?








  ● おまけ ●


 「なあゾロ、ちうぶとっぷって何だ?」
 「中部地方の知事とか財界の頭目のことじゃね?」

 こっちのツートップの不見識も、
 恥をかく前に何とかした方がいいぞ、お歴々。
(笑)






  〜Fine〜  11.07.25.

  *カウンター 385、000hit リクエスト
    一心様 『王子様ルフィ設定で、夏真っ盛りなお話を』


  *いやはや、お久し振りな王子様ですね。
   そんなせいですか、
   夏真っ盛りの“盛り”の方向性が微妙ですいません。
(こらー)
   欧州の方はどうなんでしょか、この夏。
   昨年だったかは、フランスやロシアも記録的な猛暑じゃなかったか。
   今年も暑くなりそうならば、
   平和なR王国はさぞかし、
   各国からの避暑のお客様でひしめき合うことでしょねvv
   晩には涼しい宴も催されましょうから、
   外交大使の王子様も大忙しです。
   頑張れ頑張れ、ルフィ王子vv
   二日酔いには縁がないのがせめてもの救いでしょうかね。
(笑)

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